SS<妄想癖>


男たちが高級車に乗り込む。
片方の男は金持ちで、運転は執事がしていた。
今日は天気がいいから海の見える別荘で一杯やろうという話になったのである。

 

「いや~それにしてもいい天気ですなAさん」

「そうですなBさん。それにしても、海の近くに別荘を持っているとは羨ましい。
さぞ綺麗な景色が見れるのでしょう。」

「別荘からの景色も良いですが、行き道に見える景色もなかなか素晴らしいですよ。」

男たちが別荘の話で盛り上がっているなか、車がT字路を左に曲がった。


それをみたB氏は運転手に指摘をする。

「おい、今の道右じゃなかった?」

「いいえ旦那様、左であっています。」

「そんなハズない、ワシは今まで何回もこの道を通っているから知ってるんだぞ。
今すぐ引き返せ。」

「それはできません。」

「なぜだ!これじゃあ何時までたっても別荘へは着けないだろう」

「いいんです。私が向かっているのは都内にある精神病院ですから。」

「な、なんだと!!なんでそんな所に!?」

「旦那様がおかしいからです。」

そう言われたB氏は激怒して言った。

 

「ワシがおかしいだと!?お前、いい加減にしないとクビにするぞ!」

「いいえ、奥様に説明すれば分かってもらえるハズです。
旦那様、さっきから“1人”しかいないのに誰かと話している素振りを見せたりして
おかしいですよ。
きっと疲れがたまっているのです。
精神科にいって見てもらいましょう。」

「なっ...1人!?」

A氏と顔を合わせながら再び口を開くB氏。

 

「ここにBさんがいるじゃないか!
ね?いますよね、Bさん。」

「あ、あぁ。確かに私はここにいるが...」

「旦那様、それは幻覚でございます。
A氏などという人は存在いたしません。
現実に、そこA氏とやらの声は私には聞こえないし、姿も見えません。」

B氏は唖然としたが、なんとかA氏の存在を証明しようとした。
自分は精神病などではない。
金持ちとして、プライドの高いB氏の性格ゆえに認めたくないという気持ちがあったのだ。

 

しかし、車は精神病院へと辿り着く。
執事が医者に説明してるなか、B氏はこのままでは自分は精神病患者と思われてしまうと思い
「私はA氏などみていない
寝ぼけてそんな事言っていたのかもしれない。」
と嘘をついた。


その様子を見た医者が言う。

「非常にまずい状態の様ですね。」

そして、A氏を残し、B氏と執事は通院することになった。
執事には妄想癖があったのだ。