SS<伏線の多い料理店>

こんばんわ、“伏線の多い料理店”へようこそ。
この店は山道を抜けた山の中腹ほどの位置にあり、さらに営業時間も朝の五時から一時間ほどしかやっておらず、伝説の名店と呼ばれております。
味はもちろんのこと、この店の特色ともいえるのがなんといっても“伏線の多さ”。
この店に入ってから出るまでに起こるどんでん返しの数々でお客様方を飽きさせないように心掛けております。

電車に乗り、山道をあるき、たった今、やっとの思いでこの店にたどり着いたあなた。
まず貴方は数分かけてこの店のドアを開き、そのまま店内にあるテーブル席に腰をかけ、荷物を全部下ろします。
そして貴方は軽くなった体で食材の前に立ち、バイキング方式に皿に盛り付けていきます。
そしてドリンクバーの機械の前で何を飲もうか悩んだあげく、やはり水にしようと飲み水用の蛇口からドリンクバー用のコップへと水を入れます。

貴方はそれらをもって再び席につき、まず、水を一口飲んでから食事を済まして、疲れが取れるまで暫くの間ぼーっと外の景色を眺めます。
お腹も一杯になり、満足した貴方は持ってきた荷物を抱え、万札を1枚レジカウンターの上におき、「釣り入らないよ」と気前よくレジに向けて手を振りながら店を出ていきます。

店を出たあと、貴方は後ろを振り返り“伏線の多い料理店”と書かれた看板をジッと眺めながら思います。
(伏線なんてどこにあったんだろう)と

しかし、貴方が来たときに伏線が無かったのは当たり前なんです。
だって貴方が来たのは営業時間外の夜なのですから。

ほら、わたし、最初に“こんばんわ”って言ったでしょ?