SS<館長の罠>


【怪盗殿、予告状確かに頂きました。
夜中は館内が暗くなってますので、足元に気をつけてお越しください。】

このメッセージは、全国のテレビやラジオで流された。
それを見ていた怪盗は、最後の文が少し気がかりだったが、予告状通りに犯行は決行した。
警備の目を欺き、赤外線を抜け、予告状通りにお目当ての絵の前にたどり着く。
予告状を送りつけたにも関わらず、絵の近くに警備がいないという事を、怪盗は不信に思い、入念に絵の周りを確認してみた。
すると、絵の下に落とし穴があることに気づく。
ふとテレビで見たメッセージの“最後の一文”を思い出し、ニヤリと微笑む怪盗。
そして怪盗は、落とし穴を避けて目当ての絵をそのまま盗んでいった。

後日、美術館の館長は語る。
「思った通りだ。あのメッセージを流すと、大抵の怪盗は落とし穴で安心するのか、偽物の方を持っていくんだよ」